酔いしれる情緒



「てか、なんで泣いて」





私の様子に気づいた途端


驚きのあまり丸くなった目を細くさせると、


奥に座る橋本さんを
鋭い目つきでギロリと睨む春。





「……凛に何した」

「何もしてないけど?」

「じゃあなんで泣いてんだよ」


「泣いてない!!!」





2人の言い合いに大声で割り込めば、

2人はキョトンとした顔で視線を同時に私へと向けた。





「うるさい!黙れ!泣いてなんかない!!」


「あ、うん、ごめんね?

………そうだね、泣いてないね」





春は私のそばでしゃがむと、

私の目元に指を添えて何かを拭った。



その顔はどこかオロオロと戸惑っているような。




自分でも分からない。


もう何がなんだか、

なんで戸惑わせているのか。




目前で私の顔を覗き込む春だって頭がクラクラするのだから幻覚なのかもしれない。



私が、そばにいたいと願ってしまったから、無意識にもその幻覚を見ているのかも。





「バカ春…」





目元のそれに手を添えると、



幻覚だとしても


ぬくもりは、感じられるらしい。




あたたかいその手にホッと心が安らぐ感じ。





……もっと、欲しい、このぬくもりが。




イライラしてクラクラして


そんな脳内を


このぬくもりでいっぱいにしてほしい。





「り…んっ!?」





キスがしたいと思う気持ちも





「凛っ、ちょっ…」





触れたいと思う気持ちも。





全部、春に教わった。








きっとこれは幻覚なのだから


私の欲望を押し付けたっていいでしょう?

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