酔いしれる情緒
「凛っ…!」
強い力で肩を押されると、クラッと頭の中が揺れて真後ろに倒れそうになった。
けれどそんな私の身体を倒れないように支えたのは、さっき私を突き放そうとしたコイツ。
腕を引っ張られて、今じゃ私は好きな香りとぬくもりいっぱいに包み込まれている。
「もしかして……酔ってる?」
「アンタになんて酔ってない!!」
「え、俺?
いやいや、違う、そうじゃなくて」
耳元で「だいぶ酔ってるなぁ…」と囁かれ、
……あれ。これは幻覚じゃなくて?
それにしてはやけに明確に感じるな。と、
幻覚だと思っていたことになんだか自信がなくなっていく。
クラクラとする脳内で「(え?え?)」と今のこの状況に困惑気味の私を、春は自身の腕の中に包み込んだまま。
「橋本さん……凛に何飲ませたの」
「飲ませたわけじゃないけど、お湯で割ったお酒を一気飲みしていたな」
「一気飲み!?なんで止めないんだよ…」
「お酒好きなのかと思って」
混乱する私を置いて、
2人は何やら話をしている。
ギュッと割と強い力で抱きしめられているからか、私の耳から聞こえるのは微かな話し声と春の心臓の音だけ。
ドクンドクン、と
早くもなく遅くもない
正常な速度がなんとまあ心地いい。
(あ、れ…なんか、眠い……)
さっきまで眠さなんて一切なかったのに。
交わる熱だとか
心臓の音だとか
ふわふわとする脳内では全てが気持ち良くて
「………凛?」
春に再び名前を呼ばれて最後
私はよく分からない意識の中で眠りに落ちた。
「寝ちゃった…」
その事に気づくも、
春は変わらず私を抱きしめていたこととか
「……春。
そのままの体勢でいいからそこに座りなさい。
今までの話、それから今後の話をしよう。」
橋本さんが経営者の顔立ちをしていたことも
深い眠りに沈んだ私は、
ここから先のことを何も知らない。