酔いしれる情緒


「………いえ、全く。

アイツの言うことは所詮口だけだと分かってますから」





そう口にした途端に視界が歪んだ。





あ、やばい。


なんか、泣きそう。





今ここで泣いたら本が濡れる。それはどうしても阻止するべきことで、私は必死に下唇を噛んで堪えた。



他のことを考えよう。


全く関係ないことでも考えて気を逸らそう…




(……そういえば、窓拭きから帰ってきた慎二くん案の定手袋びちゃびちゃだったな。寒さ対策の意味が全くなかった気がする)



しかも腕まくりをして戻ってきたし。

なんだかもーよく分からない服装だった。

笑える。






慎二くんのおかげでどこか落ち着きを取り戻した心。



その後、橋本からクスッと小さな笑い声が聞こえては現実に引き戻された。






「口だけ、ねえ。」


「……なんですか」


「いや、なにも?」





そう言う割にニヤニヤと笑ってくるから自然と舌打ちが出てしまう。





「なんでここに来たのか知りませんけど、今忙しいんじゃないですか?所属タレントの熱愛報道に事務所内荒れてそうな気がしますけど。」


「さあ?どうだろうね。でも僕がここにいるってことは意外と大丈夫な案件なのかもしれないよ」


「ただサボってるようにしか見えません」


「これも仕事の一環だよ」


「はあ…?」





本屋に来て適当に選んだ雑誌を買って小説の立ち読み。



それのどこに仕事の要素があるのか?

全く分からない。

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