酔いしれる情緒
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後日。ちょうど連休になっていたところを使って私は久しぶりに実家へ帰省した。
実家に帰るキッカケをくれたのが橋本だと思うとちょっと気分が悪くなるけど。
実家に帰ってきても生活リズムは変わらずで、
その中でも普段と光景が変わったことと言えば…ご飯を食べる時1人じゃないこととか、テレビがフル稼働しているぐらい。
朝起きても、昼間も、ご飯を食べている時も。
家に誰かがいる限りはずっと点いてる。
だからこそ……
「あ。一ノ瀬櫂だ」
「………………」
香水を片手に持った一ノ瀬櫂をこの目で目撃することになる。
食事中の今、大学4回生である妹は箸を止めてそのCMを見つめていた。
「かっこいいよね~ 櫂くん。
この香水買っちゃおっかな~」
「無駄遣いになるからやめなさい」
「無駄遣いじゃないし~」
母と妹の会話を耳にしながら、私もそのCMに意識を向ける。
(髪……伸びたな)
…そりゃそうか。
もう1年も会っていないんだから髪ぐらい伸びてて当然だ。
久々に見た彼の姿。ふわふわと柔らかそうな髪質は変わらずのようで、彼は香水を片手に柔らかい笑みを浮かべ、どこか色気を感じる表情をこうやって視聴者に向けている。
妹はそれを見ながら黄色い声を上げていた。
「色気やばーい!」
「………………」
「ほんと、こんなイケメンと付き合えるとか羨ましいよね~」
「…………あのさ」
「ん?」
「この人、って───…」
本当に付き合ってるの?
そう聞くつもりが、途中で言葉につまる。
「櫂くんがなに?」
「…………………」
どうしよう。
知るのが────怖い。
きっと妹は知っているだろう。
聞く限りでは一ノ瀬櫂のファンっぽいし。
一ノ瀬櫂の熱愛についても、
事務所からの正式な解答もファンだからこそきっと知ってるはず。
あの日
橋本は『後日発表する』と言っていた。
てことは既に発表されているんじゃないかと
思う。
携帯で調べることも、テレビを見ることも無かった私は未だそれについての解答を知らない。