酔いしれる情緒
「…………やっぱりなんでもない」
「えー?何それ、気になる~」
ねぇねぇと少し執拗い妹に「しょうもない話だから」と言ってその場から逃げた。
使った食器をシンクに置いて、小さくため息。
テレビは既にCMから番組へと切り替わっていて、そこにはもう一ノ瀬櫂の姿はない。
たったそれだけでも寂しいと感じてしまう私。
彼の見た目は知らぬ間に少し変わっていたけど
違和感を感じさせる笑みはそのままで。
「……………連絡ぐらい、してよ…」
熱愛が出ているからこそ、求めてしまう。
例え口だけの約束だとしても、熱愛が事実だとしても。
その約束にずっと縋りついていたいくらい
私は彼が好きだ。
「…………………」
自分の部屋に戻りテーブルを前にしては
本ではなく、携帯を取り出した。
指先はどこか手慣れたように春の連絡先を開ける。
今までずっと、何度、この行為を繰り返したことか。
だけど結局は『春』という名前だけを眺めるだけで、何もせずに閉じてしまう。
……連絡は毎日待ってる。
最近じゃ、朝起きてスグに携帯を開けて通知を確認することが日課になった。
確認したところで連絡があったことはないけど、無いと分かっていたとしても確認してしまう。
癖になったとか、そんなんじゃなくて
……待ってるから。
心の底から、春からの連絡をずっと待ってる。
もう約束の1年は過ぎてる筈なのに
何の音沙汰もなくて────