酔いしれる情緒
(…………1回…だけ)
今日の私はいつもと違ってどこか積極的で
少し緊張しながらも通話マークを押した。
(3コールで出なかったら、切ろう)
そう決めて、携帯を耳に当てる。
ドキドキと高鳴る鼓動とコール音。
プルルルル
プルルルル
プルルルル…
だが。決めた3コール目が過ぎても繋がることは無く、予定よりも2コール多い5コール目で通話を切った。
(出ない…か)
まだ仕事中なのかな。
もう22時になる前だけど……
緊張はするだけ無駄に終わり、少しばかり期待していたからかどこか虚しい気分になる。
(この時間だともう家にいたのに)
仕事じゃないとしたら、何をしてるんだろう。
遊びに行ってる?それとも呑みに?
誰と?関係者?友達?
それとも───…
「…………………」
『熱愛』の文字がチラつき、無意識にも手に力が籠った。ギュッと携帯を握り締める。
………最悪。かけなきゃ良かった。
こんな気分になるなら知らない方がまだマシだった。
電話にも出れないほど『誰か』と楽しんでいるのかもしれないということ。
私に見せてくれたあの柔らかい笑みは
きっと違う誰かにも見せているということも。