酔いしれる情緒



「っ、」





気分が少し下がっている今

突如鳴り始めた着信音に肩がビクッと跳ねる。





もしかして、と。




そう思った私は慌ててその電話に出た。





「もしもし…!」


『あっ、安藤さん?夜遅くにごめんね』


「あ……はい、どうしたんですか」





想像していた声とは違い、携帯越しに聞こえてくるのは店主の声。



分かりやすく声が変わったからか「ほんとごめんね~」と再度謝られた。





『今週の水曜日お休みでお願いしていたんだけど、やっぱり出勤に変更してもいい?』


「いいですよ。特に用事ないんで」


『助かるよ~!その日入荷が多くてねぇ。忙しくなりそうだから人数増やそうと思って。
その代わり次の木曜日休んでくれて構わないから!』


「分かりました。」


『じゃあよろしくね~』





と、店主の返事を聞いてから電話を切る。




そして再び画面を見つめては、もう一度春の連絡先を開けた。





『間違えて押しちゃっただけだから気にしないで。』





と。一言送るために。





…………これで返事すらもなかったらそれはそれでツラいかも。





考えたくないけど、考えてしまう。



嫌なことばかり。


ずっとネガティブ思考だ。






そこから本を読み、眠気がきては崩れるように机に突っ伏して眠りについた。




朝起きた時、ちゃんと布団で寝なかったからか腰が痛くて仕方がなかったけど、





携帯の画面はいつも通りで





1日経っても

2日経っても

春からの返事は無し。





腰の痛みなんかよりもずっと、胸の方が痛かった。


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