酔いしれる情緒


「……、………凛」

「ん?」



困ったように、眉根を下げて。



「どうしよう」

「えっ?」



だけどなんだか愛おしそうに私を見るその目。




頬にあった手が


指先が





「キス、したい」





私の唇を優しくなぞる。



その言葉に体の芯から熱くなってく私。




ここはまだ由紀子さんがいる車の近くで


人の目も……少なからずあるわけで。





「ダメ」





私がそう言えば


春は私の返答を分かっていたかのように
緩く笑みを浮かべる。




「………けど、」





私は春の手をやんわりと掴んで





「人気のない場所なら、いい」





ピクリと春の手が微かに動いた気がした。



それは動揺していることを意味していて──…





「ここ、腕回して」

「腕?」





示された場所は春の首元。



言われるがまま、回してみる。



その時引っ掛けてくれた上着が肩から落ちそうになるけど、春はその上着ごと私を抱きしめては…





「ひゃあッ!?」





本日二度目。



店から連れ出された時と同様、

春は私を腕に抱える。





「こ、れ…危ないってば!」


「大丈夫大丈夫」


「私重いし…!」


「俺の腕にすっぽり収まるくらい軽いよ」


「は…ずかしい、し…」





すると春は妖しく笑って。





「そういう顔が見れるから、したくなるんだよね」


「っ………」


「大人しく俺にされるがままになって。」





その言葉にドキッとするよりも、車の中にいる由紀子さんの反応が気になってしまった。





(由紀子さん見てるのに…)





大胆にこんなことをして……また引き離されたりしないだろうか。



いや、まあ、この状況からして今更なんだけど。

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