酔いしれる情緒




翻弄されていた私を見て満足したのか口内を犯していた指をゆっくり引き抜こうとした春。



経験したことの無い感覚がなくなってホッとするよりも、私は私の中で何かのスイッチが入ったみたいで。




「ッ、」





引き抜かれる前に軽く噛み付いてやれば春の顔がピクリと歪んだ。



加減はした。

だから痛くないはず。



でも、





「……私だけの傷をつけて、私だけを憎んで、もっともっと私に依存して」





噛み跡だけじゃ足りない。



もっと。もっともっと────。





「身も心も全部。

これからもっと私色に傷つけばいいよ。」





強引で、執拗くて、鬱陶しい。この人だけに限らなくたって男は世界中に沢山いるし、そういう存在がいなくたって平気。




だけど


私のものであってほしい、と


心からそう思えるのは世界中でこの人だけ。



もうこの感情から後戻りなんて出来ないんだ。





透き通るように綺麗な、まるで光に反射させたガラス玉のような澄んだ瞳。



身近にはいない本当に綺麗な瞳を持つ彼に
またしてもドキッと、心臓が跳ねてしまう。




私の独占欲も今に始まったことじゃない。



春を好きになった時からずっと、春を益々好きになるにつれてもっと、この欲は強くなっていく。



綺麗な瞳に射止められては


もはや逸らすことなんて不可能で。





「その顔……たまんないんだけど」





春は私に噛まれた部分をぺろりと舐めて
意味ありげな微笑みを浮かばせる。



傷をつけられて、おかしなことを言われているというのに、春はそれが至極嬉しいみたいだ。



ほんとマゾだなって、何度もそう思う。





………けど。





「凛になら何されたっていい」





こんな奴を愛し、


愛されてしまったんだから





「もっと俺をめちゃくちゃにして」





もうどうしようもないのだ。

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