request
「布団は三階にありますから後で蒼空に取りに行かせますからね。」
陽葵さんのその言葉にコクリと頷けば「そういえば蒼空は今も川に?」っと心音さんに問いかける陽葵さん。
「蒼空ならついさっきまた川に行きましたよ~」
「そうですか。じゃあ僕も探しに行ってきます。」
陽葵さんまでもが寒さ対策万全に服を着込み、
「月姫さんはもう今日の仕事終わりですからゆっくり寝ていて下さいね。…それから心音、もっと着込んで。それだと心音も風邪引きますよ。」
そのチャイナ服姿の心音さんを注意すると「え~私は風邪引かないのに~」なんて文句を言いながらもちゃんと言う事を聞く心音さん。
「じゃあ行ってくるわね月姫ちゃん!!……あ、ちょっと待って。」
一回履いた長靴を脱ぎ捨てるとまた事務所の中に戻ってきて、
「冷えピタ、つけとかなくちゃね」
ペタッと私の額に冷えピタを貼る。急激な温度差に一瞬ブルッと身体が震えたが、
「じゃあ行ってきます!!」
陽葵さんの後を追うように事務所を出て行った心音さんを見て軽く手を振る。
(言われた通り寝てなくちゃ)
重たい身体を再びソファーに腰掛けて、横になる。
…正直言って今日の仕事がもう終わりなんだと思うと凄く嬉しい。
(今頃蒼空さんは冷たい川の中に…)
悪いな蒼空さん。私はヌクヌクと暖かい所で毛布に包み込まれてますよ。
そう思いながらフッと笑うが、
(……まあでも、いつ”ありがとう”って言うべきか…)
もう言うタイミングがないんじゃないかと後悔する私。
なんだか照れるんだよね…