ときめき、デイドリーム
あわあわと青ざめているわたしを見下ろしていた朝水那吏様は。
「……だから、言ってるでしょ。様付けしないでって。あと、敬語もなし」
ふっと、ゆるく口元に弧を描いて、目元もやわらかくほぐれて。
気が抜けたような笑みに、ずぎゅんと心臓がたやすく撃ち抜かれた。
ゔっ……、さ、さすが兄弟。笑顔は、だめだ。こんなの、現時点でも多いであろう朝水くんファンが見たら、一瞬で墜落する。
「き、気をつけます……」
「よろしく」
そう言って、すたすたと背中を向けて去っていく朝水くん。
やっと、心臓がおとなしくなる……と、安堵していたのも束の間。
「……?なにしてるの」
「え?」
数メートル先で、朝水くんが立ち止まって振り返っている。首を傾げて。
「途中までおくる」
「…………、へ??な、なんで?」
「……約束を守ってくれる、お礼、みたいな。というか、いま、ちゃんと敬語とれたじゃん」
「……ハッ!!!」
スーパーに寄って帰る、と言ってもそこだけは譲ってくれず。
結局、家の近くの別れ道でバイバイするまで、朝水くんと帰ってしまい。
……当然、朝水くんと何を話したかなんて、全然おぼえていなかった。