すずの短文集
涙の花
たくさんの命が犠牲になったこの大地に、名もなき小さな『種』である私が蒔かれた。

奪われた命を悲しんだ、その人によって。

訪れた人々のたくさんの涙が、水の代わりに私に降り注ぐ。


私はきっともうすぐ地上に芽吹くのだろう。

普通の植物と同じように、

芽吹き、伸びて、花が咲いて…

その時、私の願いが芽生えた。


涙を注がれ続けられる私だけれど、私が咲くことを願って蒔かれたと信じたい。

だから、私は幸せを届ける花を咲かそう。

この地に幸せが訪れることを願い、人々に笑顔が戻るよう…
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