海とメロンパンと恋


ピンポーン


「干柿家政婦商会から来ました」


「え!えっ、クミ、ちゃん?」



二時ちょうどに厳しい門に付くインターフォンを押すと

焦った陽治さんの声がしたと思ったら
ドタバタと騒がしい音が聞こえて


「・・・クミちゃん!」


厳しい門が開いた瞬間
陽治さんを先頭に厳ついさん達が雪崩のように飛び出してきた


「・・・えっと、こんにちは」


その勢いに押されて
引き気味に挨拶をする


「「「ちぃーす」」」
「「久しぶり」」
「「「元気にしてたか」」」
「てか、めちゃくちゃ可愛いじゃないか」
「いつもの下手くそな変装はどうしたんだ?」


一気に口を開いた厳ついさん達に囲まれてしまった


「あ、と、あの・・・」


「ほーら、クミちゃんが困ってるぞ」


助け出してくれたのは陽治さんで


「いらっしゃい」


少し照れたような顔で迎え入れてくれた


久しぶりに入った門の中は
変わらず厳しくて


「フフ」笑ってしまった


「「「・・・っ!」」」


それに驚いた顔をする厳ついさん達に


「どうかしましたか?」


問いかけてみたけれど


ブンブンと頭を左右に振るだけで
答えてはくれなかった


「ワンッ」


「・・・っ」


ちょうど聞こえた鳴き声に
いつかみたいに引き寄せられるように身体が動いた


「クミちゃん、危ないっ」
「ダメだ!噛まれるっ」

背中に打つかる声を放って
着いたお庭で弁慶は繋がれていた


「弁慶っ」


駆け寄って抱きしめる

牛若丸とは違う匂いにクスッと笑えば
弁慶は牛若丸の匂いを確認するように
擦り寄ってきた


「クミちゃん、平気、なのか」
「「「スゲェ」」」
「噛まないなんて・・・」


「弁慶、噛むの?」


真っ黒な目に問いかけてみると
「クゥーン」と甘く鳴いた


「クミちゃん凄げぇな」


陽治さんと隣には誠司さんも見える


「うちにも同じ犬種がいるので」


いきなり兄弟犬の話よりは
納得してもらいやすいだろう


「へぇ、そっかぁ」


簡単に思惑に乗ってくれた陽治さんは


「ところで今日は?」


突撃訪問の意味をようやく聞いてきた





< 114 / 190 >

この作品をシェア

pagetop