海とメロンパンと恋
真相とメロンパン





side 桐悟



「とりあえず柚真に説明を」


「あぁ、蒼佑悪かったな」


「ん・・・あぁ」


珍しくニヤリと口元を緩めた蒼佑は
片眉だけを上げて部屋を出て行った


・・・さて


先に原因を柚真に伝える、か


携帯電話を耳に当てて直ぐ


(もしもし)


さっきより幾分柔らかな柚真の声が聞こえた


「俺だ・・・胡桃の涙のことだが
“ミナ”との電話を聞いてしまったようだ」


(クッ、あぁ)


吹き出す様子から
大方予測通りだったのかと肩の力が抜けた


「ミナに連絡した理由は想像できるだろ?」


大学の同級生で友達のミナは
柚真の友達でもある

だから俺の意図も汲んで貰えると思ったが


(でも、まぁ、紛らわしいことをしたに違いないだろーが)


柚真は酷く楽しそうに喉を鳴らした上で


(ボトル入れろよ)


BAR dark のボトルを要求してきた


・・・後は胡桃に話すまでに
ミナに依頼を出さなければ



不敵に笑うミナの顔を思い浮かべるだけで

俺と柚真と蒼佑とミナ
飽きるほど一緒に居た大学時代


楽しかったあの頃が酷く鮮明に浮かび上がってきた



・・・



気の合う四人で飲むことは少なくなったけれど
今でもdarkで横並びに座れば

一瞬で大学時代へと戻れる関係



大学を出ると直ぐ
ミナは稼業を継ぐための一歩として海外へと飛び立った


ミナの家は代々続く宝飾店で
高級店として有名だが

帰国後にミナが手掛けた【jewelry kt】は
比較的安価な商品が並ぶ若年層に人気の店になり

ここ数年で店舗数も売り上げも伸ばしている


海外での買い付けに飛び回り
多忙を極めるミナとはここ一年余り会えていなくて


そのミナから連絡があったのがあの夜で


胡桃のために作って貰いたいものがある俺が
必死に“会いたい”と食い下がった電話だった




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