海とメロンパンと恋



Prrrrrrrr



不意に鳴り始めた携帯電話には
会いたくて堪らない相手が表示されていた


(もっし〜)

「俺だ」

(んで?何?)

「作って欲しいものがあるんだ」

(口で説明出来そう?)

「いや、難しい」

(今からdark来られる?)

「十分で行く」


緩めたネクタイを締め直し
飛ぶように部屋を出ると

まるで出て来ることが分かっていたかのように蒼佑が立っていた



「どこに?」


「dark」


「車は、スタンバイ済みです」


「あぁ」


滑るように廊下を抜けて玄関から出ると
蒼佑の言った通り星野がエンジンをかけて待っていた


「darkまで」


「承知」


走ってでも行けそうな距離だが
僅かな時間も無駄にはできない


ミナへ告げた半分でdarkの扉を開いた


「・・・っ」


瞬間、目に飛び込んできたのは
会いたかったミナの背中と


「ヨォ」


半笑いの柚真だった


「知らねぇうちに面白いことになってんじゃん」


ケラケラと笑うミナの隣に腰掛けると
肩に手を乗せられた


「・・・あぁ」


「柚真を“お兄ちゃん”って呼ぶのか?」


「・・・それは、仕方ない」


「へぇ〜、桐悟本気か」


「本気だ」


「ふ〜ん」


聞いた割に興味を失った様子のミナは
ロックグラスを揺らしながら


「その柚真の妹ちゃんに何か作って欲しいってことだよな?」


ポケットからメモ用紙を取り出した


「リング?ネックレス?ピアス?」

「形は?」


矢継ぎ早に質問しながら俺を観察するみたいに視線を寄越すミナは
どうやらこの場でデザインするみたいだ


「ネックレス」


「トップは?」


「丸い」


「丸い?・・・コインとか?」


「いや」


「・・・ん?」


「メロンパン」


「・・・・・・ブッ、え?」
「ブッ」


黙って聞いていた柚真も同時に吹き出した




< 152 / 190 >

この作品をシェア

pagetop