海とメロンパンと恋
「どうしたの?」
間近のお兄ちゃんの顔は真っ直ぐ正面を向いていて
その視線を辿った先に
「・・・っ」
絶対零度の視線を視線をお兄ちゃんに向けている頭さんが居た
・・・え、と
これはどういう状況なのだろう
静かに睨み合うようなお兄ちゃんと頭さんは
もしかして面識があったりする?
いい感じに酔っていたはずなのに
ふわふわした気分は一瞬で吹き飛んで
どうすればいいのかを
閃きようのない頭でフル回転させてみる
その間に
「邪魔だけど」
意外なことに口を開いたのはお兄ちゃんが先だった
・・・ちょっと待ってお兄ちゃん
多分“厳つい頭”の頭さんは
“穂高組”とかいうところの一員で
そんな口きいたら痛い目に遭わせられたり・・・するかも、よ?
脳内再生のみでお兄ちゃんに念を送ってみるけれど
もちろん伝わることなんてなくて
「その女」
「あ゛?」
「ちょっと借りられねぇか?」
焦っているうちに頭さんは衝撃の一言を放った
・・・・・・は?
「お前、自分が何言ってるか分かってんの?」
だからお兄ちゃん!そんな口っ
「分かってる」
「てか、お前が手ぇ出して良い相手じゃねぇんだけど」
「お前は良いのか」
「良いに決まってる」
お互いに“お前”口撃を繰り出すから
一触即発の引き金になりかねないと更に焦る
と、次の瞬間
「十分だけで良い、話をさせてくれねぇか」
頭さんが頭を下げた
「言ってる意味が分かんねぇ」
「じゃあ五分でも良い、胡桃と話をさせてくれ」
「・・・知り合い、なのか?」
頭さんが私の名前を出したことで
お兄ちゃんの視線が鋭いまま私に戻ってきた