海とメロンパンと恋



「・・・・・・あ、と、うん?」


お兄ちゃんの睨みが怖すぎて涙は引っ込むし
曖昧な返事しかできない


「胡桃」


「はいっ」


「どこで知り合った」


「・・・えっと」


「それは俺が・・・」


頭さんが割り込んできたけれど


「テメェは黙ってろよ」


お兄ちゃんはどっちがヤクザが分からなくなるほどの強い語気で頭さんを止めた


「胡桃、俺は胡桃に聞いてる
家と公園だけで、いつコイツに会った」


これは正直に話さないと
一晩中叱られるかもしれない

折角良い気分だったのに・・・


「あ、と・・・あのね?」


「あぁ」


「千代子さんが」


「千代子さん?」


「牛若丸に驚いて怪我した翌日から
穂高組の仕事が入ってたらしくて」


そこまで言うと、お兄ちゃんは全てが繋がったように深くため息を吐いた


「で?仕事は終わったのに、まだ胡桃に用があるのか?」


「頼む」


「断る」


「・・・っ」


「知り合いなら尚更時間はやれない」


「柚真、頼む」


名前を呼ぶなんて、やっぱり知り合いだ


「じゃあ、此処で話せ」


「・・・っ」


「それが出来ないなら、この話は終わりだ」


お兄ちゃんはキッパリと言い切った


「じゃあ、胡桃をおろせ」


「チッ」


お兄ちゃんならこのまま頭さんの言うことなんて聞かず
無視して帰るのかと思ったのに


舌打ちだけの返事をしたお兄ちゃんは
少し躊躇ったのち私を下ろした


「キャ」


ヒールと酔いでグラリと揺れる身体は
そのままお兄ちゃんに抱きとめられた


「平気か?胡桃」


「うん、平気」


「早く連れて帰りたいから手短にしろよ」


「・・・一緒に、住んでいるのか」


「それがどうかしたか」


「いや・・・そうか」


私のことは調べられているはずなのに
兄妹ということも知らないのか

私とお兄ちゃんが一緒に住んでいるということに

酷くショックを受けているように見えた



< 47 / 190 >

この作品をシェア

pagetop