海とメロンパンと恋



「おはよ〜」


早朝から大声で部屋に入ってきたお兄ちゃんは


「胡桃っ、起きろっ!」


頭でも打ったのかと心配するくらいのハイテンションで

私の部屋のカーテンまで開けだした


「・・・ま、ぶ、しい」


「ほら、起きろ、良い若いもんが」


「・・・」


眠い目を擦って壁の時計を見る


「・・・嘘」


六時半だった


「一体、何時に出てきたの」


おはようも返さず聞いた私に


「聞いて驚け〜、三時過ぎだ」


「へぇ」


最早このテンションには誰もついていけまい


「反応薄っ」


「・・・」


そもそも今日起きるのは
一時間後の予定だったし

起きてやらない


寝る体勢に入ろうとした私の
シーツを剥ぎ取り


手を引いて無理矢理起こそうと頑張るお兄ちゃんとの攻防は

・・・もちろん力で敵うはずもなく

お兄ちゃんに軍配が上がった


「モォォォォォォ」


負けた後のひと泣きに
ケラケラと笑ったお兄ちゃんは


「胡桃牛め」


私を牛にした


渋々起きると、久しぶりの四人の朝ごはんで


早起きもたまには良いかもしれないと機嫌を戻した


「もう荷物は積んだからな」


「・・・は?」


「後は胡桃を乗せて帰るだけ〜」


楽しそうなお兄ちゃんは
朝食後にパン屋に行って

パンも詰め込むらしい


いつもなら“夕飯まで食べて帰りなさい”ってお母さんも誘うのに


どうやら今日は違うらしい


「胡桃、お皿洗うの手伝って」


「は〜い」




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