海とメロンパンと恋



途中サービスエリアで休憩をとりながら

車は順調に走って


お昼前にはお兄ちゃんのマンションに到着した


「おかえりなさいませ」


車を降りて早々に宮武さんの姿があって驚く


「お、ナイスタイミング」


なんて親指を立てたお兄ちゃんは
どうやらお願いをしていたようで

宮武さんは荷物を載せる台車を用意して待っていてくれた


お母さんの買ったたこ焼き器も無事載せて

台車を押してくれる宮武さん


結局、家の中まで運び込んでくれたから


お礼に、お父さんの焼いたパンを
色々詰め合わせてお礼にした


「実は、一度頂いたことがありまして」


メロンパンが大好きになったという


「私も好きです」


お父さんのメロンパンが褒められたことに嬉しくなった


「・・・?」


急に動かなくなった宮武さんは
顔を赤くして俯いてしまった


「おいおい胡桃、お前罪作りだな」


呆れ顔のお兄ちゃんに
頭はハテナしか浮かばない


「あ、では、私はこれで失礼します」


宮武さんはパンの袋を持つと
逃げるように出て行ってしまった


「ねぇ」


「ん?」


「どういうこと?」


「え?」


「宮武さんだってば」


「あれだ、胡桃。メロンパン褒められて嬉しかったんだろ?」


「そうだよ」


「それを『私も好きです』って
前後を省きゃ、告白だぞ?」


「・・・っ!」


「今頃気付いたのか」


「・・・う、ん」


「ま、宮武だって間に受けてはいないが
勝手に解釈して赤面したんだろ」


「・・・どうしよう」


「どうもしなくて良いさ
宮武もちゃんとわかってる」


「・・・悪いことしたなぁ」


「これ以降気をつけることだな」


「分かった」


「特に、男は自分のことじゃないと思っていても
勘違いしたくなるもんなんだ」


「そうなの?」


「それが可愛い胡桃相手ならな」


「ほら、やっぱり茶化して〜」


許さないよ〜なんて言いながら
冷蔵庫を開けた私の後ろで



「怖ぇよ、無自覚って」


お兄ちゃんが呟いていたなんて知らない









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