海とメロンパンと恋


side 桐悟


胡桃と連絡がつかなくなって二日後

メッセージを送ろうとした俺が目にしたのは


【メンバーがいません】


トップ画像も消えて
【胡桃が退出しました】という
悲しい画面だった


慌ててリダイヤルを押すと流れるのは
[現在使われていない]という機械音声で


胡桃との繋がりはそこでプツリと途絶えてしまった


「クソッ」


どこで間違えた?
頭を働かそうとするけれど

最後に見た胡桃の泣き顔がチラついて
苦しいばかりが先に立つ


今の俺ができること


胡桃のために一生懸命になると決めたんだ


格好悪くても諦めない


そう決めた俺は


覚悟を決めた



・・・



「ヨォ」


「チッ」


俺が弱ってるんだから
間違いなく柚真も弱っているはず


俺の立てた予測は的中で
馴染みのバーには背中を向けた柚真が座っていた


「なんだよ」


「弱ってる柚真の顔を見に来た」


「振られたお前に言われたかねーよ」


「チッ、振られた訳じゃねぇ」


「振られたも同じだろ」


「嫌いと言われてねぇから
まだ勝算はあるはずだろ」


「チッ、お前、いつからポジティブ思考になったんだ?」


「胡桃に会ってから」


「気安く名前を呼ぶな」


「お兄さんはご機嫌斜めか」


「チッ、テメェ表に出ろや」


「出ても良いが、学生の頃とは立場が違うんだ
お前の肩書きに傷が付いても良いのか?」


「・・・クソが」


変わらないやり取りに
どちらともなく吹き出して


結局、大人しく飲むことになった


「胡桃と喧嘩した」


「良い歳してか」


「それも初めて」


「・・・そうか」


「胡桃は闇雲に頑固な訳じゃねぇ
だが、今回のコレは俺が悪い」


「弱ってんな」


「お前もだろ」


「あぁ、柄にもなく弱ってる」


「胡桃は良い女なんだ」


「知ってる」


「それがムカつく」


俺の妹なのにと恨めしそうに俺を見る柚真は

泣き出しそうな顔をしていた







< 96 / 190 >

この作品をシェア

pagetop