パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
 するとわたしの肩を掴んでいる彼の手が、微妙に揺れはじめた。

 ……?

 おそるおそる目を開けると、彼は耐えきれないといった感じで笑っている。

「薫……きみ、もしかして本気で迫られるとでも思ったのか?」

「なっ、」
 カーッと頭に血が昇った。
 もう、人をバカにするにも程がある!
 いくらイケメンでも、やっていい事と悪い事があるでしょ!

 わたしは肩にかかっている彼の手を力づくで振り払った。

「アデュー。もう永遠にわたしの前に現れないで!」
 そう捨て台詞を吐き、踵を返す。
 うーん、決まった。
 と思ったのに、また前に進めない。

 だから、袖、掴まないでったら。
 しかも爆笑してるし。
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