パリの空の下、極上セレブ御曹司の貴方に今日も甘やかされてます
「そう……なんですか」
 
 いや、急にそんなこと言われても、どう返したらいいのか……

 彼は真剣な表情になって、わたしにまっすぐ視線を向けた。
「ここからは真面目な話だ。薫、パリに来てくれないか」
 
 だからーーーーーーっ。
 
「何度言えばいいんですか? わたしはあなたと婚約する気も結婚する気もさらさらないって」

 彼はわたしの顔の前に手を出し、言葉を制した。

「まあ聞けって。パリに来て、婚約者の〝フリ〟をしてほしいんだ。薫が気に入ったというのは本心だが、私もきみと結婚する気はない。残念ながら、子供(ガキ)の相手をする趣味は持ち合わせていないんでね」
「ガキって……」

「ガキ以外の何物でもないだろう? 約束をすっぽかして逃げようとするところなんか、『世界は自分のために回ってる』とでも思っている証拠だろうが」
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