初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
波乱の新婚生活
ふたりだけの幸せな日々を過ごしたモルディブ旅行が終わり、彼がひとり暮らしをしていた恵比寿のマンションで新婚生活が本格的に始まる。しかし、一週間も休暇を取った彼は残業続きで帰りが遅く、私も来年の三月に行われるピアノの発表会の準備で忙しい毎日に追われている。
それでも、クリスマスは結婚式をあげたホテルのレストランでディナーを楽しみ、元日には成城の実家でおせちを食べ、初詣に行ってお正月気分を満喫した。
仕事と慣れない家事の両立は大変だけど、休みの日には彼が率先して掃除と洗濯をこなしてくれるし、ひとり暮らしが長かったせいか私より料理の腕がいい。
「おいしい。直君はいいお嫁さんになれるね」
「お褒めいただき光栄です」
一月中旬の日曜日のお昼に、彼が作ってくれたふわとろ卵のオムライスを食べながら冗談を言って笑い合う。
慌ただしい日常から解放されて、ゆっくり過ごすランチタイムは楽しくて自然に会話も弾む。
「あのね、昨日の会議で、今年のピアノの発表会の講師演奏を私が担当することに決まったの」
オリハラ音楽教室のピアノ発表会では、生徒の演奏が終わってから講師が曲を披露するのが慣例となっている。今年は発表会を最後に退職するという理由で私が選ばれた。
「へえ、そうなのか。なんの曲を演奏するんだ?」
「月の光」
「ああ。ベルガマスク組曲か」
「うん。そう」