初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「ここは?」
タクシーから降りた先にある豪邸を見て尋ねる俺に、叔父さんは「オリハラ楽器の社長宅だ」と笑顔で言った。
オリハラ楽器のピアノといえば、国際ピアノコンクールでも使用されることが多い世界が認める楽器メーカーで、自宅のアップライトピアノもオリハラ製だ。
「社長とは昔からの知り合いで、今日はお嬢さんの誕生日パーティーなんだ。立食パーティーだから気兼ねせずにたくさん食べるといい」
レストランに連れて行ってくれるものと思い込んでいた俺にとって、叔父さんの言動は予想外。豪邸の前で呆然と立ち尽くす。
面識のない社長令嬢の誕生日パーティーに参加するのは気が引ける。こんなことなら叔父さんのマンションでピアノの練習をしていた方がよかった。
そう思ったものの、今さら帰るのも面倒くさいし腹も空いている。
「ほら、行くぞ」
おいしい料理が腹いっぱい食べられるという誘惑に抗えず、高級車が何台も止まっているガレージを横目に叔父さんの後をノコノコついて行った。
ロイヤルブルーのドレスを身にまとい、人見知りもせずに初対面の俺を『直君』と呼ぶ姿はとてもかわいい。
十も年下の女の子をかわいいと思うのは少しヤバいのではないかと思ったけれど、妹がいたらきっとこんな感情を抱くのだろうと無理に自分を納得させた。