初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「待たせてごめんなさい。寒かったでしょ?」
コンサートホールの裏口の前で、コートのポケットに手を入れている彼に声をかける。
東京の桜は見頃を迎えたけれど、太陽が沈んで辺りが暗くなると急に冷え込んでくる。
カーディガン一枚で出歩ける本格的な春の訪れの訪れを待ち遠しく思うと、彼が首を左右に振った。
「いや、大丈夫だ。ウィーンの方がもっと寒い」
「そっか」
「ああ。それにこうすれば、ちっとも寒くない」
私が抱えていた花束を彼が軽々と持ち、空いた手を繋いで歩き始める。
「結婚式をあげたホテルに部屋を取ってある。そこで帰国するまでゆっくり過ごそう」
恵比寿のマンションはすでに引き払っている。実家に帰っても両親が彼と話したがって、ふたりで過ごせる貴重な時間が減ってしまうに決まっている。
ここは彼の言う通り、ホテルに泊まった方が賢明だ。
「うん」
両親には後で事情を説明することに決めて、彼をホテルでひとり占めできる喜びに胸を躍らせて歩を進める。しかし、駅に続く道の途中にあるカフェの前で足が止まってしまった。