初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
「帰って来るって、どうして教えてくれなかったの?」
「連絡するなと言ったのは、小夜子だろ?」
彼が唇の端を上げて小さく笑う。
一週間前の通話でたしかに連絡を拒んだけれど、揚げ足を取るなんて性格が悪い。
「……意地悪」
含み笑いをする彼を軽く睨むと、頭の上に大きな手がポンとのった。
「最後の演奏を見届けるって約束したからな。来週の月曜日までの仕事を片づけて、強引に休みを取った」
「そうだったんだ。ありがとう」
約束を守るために無理をしたのではないかと不安になる。でも、久しぶりに彼の温もりを感じられるのはやっぱりうれしい。
頬が勝手に緩むなか、再会の喜びに浸っていると麻衣先生に声をかけられた。
「小夜子先生。そろそろ着替えないと、閉場時間に間に合わなくなりますよ」
「うん。わかりました」
講師演奏を終えてすぐに生徒たちの見送りをしたため、私はまだドレス姿のまま。
発表会の主役である生徒たちより目立たないように、スカートのボリュームを抑えたネイビーブルーのドレスを選んだけれど、このままの格好で外を歩くのはさすがに目立つ。
「外で待ってる」
「うん」
彼が麻衣先生に会釈をして外に出て行く。
「旦那様、相変わらずカッコいいですね」
「ありがとう」
麻衣先生の褒め言葉をうれしく思いながら、スーツの上にコートを羽織った自慢の夫のうしろ姿を見つめた。