初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
四月になって渡航準備が整うと、彼が待つウィーンへ旅立つ。
ピアノが弾けないのは少し寂しいけれど、アパートスタイルホテルでの生活は快適だし、なにより彼と一緒にいられるのがうれしい。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
キスを交わして仕事に向かう彼を見送る。そんな平日が終わり、ウィーンへ来てから初めて迎えた週末。不動産屋の案内で物件を見て回る。
日本ではグランドピアノが置けて、防音設備がある家を見つけるのは難しいけれど、さすが音楽の都ウィーン。すぐに新居が決まった。
石造りの重厚な外観の建物の最上階の部屋から、ウィーンの美しい街並みを見つめる。
もうすぐ、彼と再会した五月が訪れる。
二十年振りの再会を果たした翌年に、夫婦となってウィーンで暮らしているなんて、一年前は思ってもみなかった。
短くも濃密だった日々を感慨深く思っていると、背後から声をかけられる。
「小夜子先生。レッスンをお願いします」
「はい」
すでにピアノチェアに座っている、愛しい彼のもとに向かう。
暖かい太陽の光が差し込む部屋で、今日も私たちはピアノを奏でる。
END


