初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~
明日を待ち遠しく思っていると、おじさまがシャンパンを飲み干した。
「さあ。もう遅いからホテルに戻った方がいい」
「はい」
控え室の壁かけ時計の針は、午後十時四十分を指している。
まだまだ積もる話はあるけれど、おじさまも疲れているはずだ。長居するのはよくない。
彼に続いてソファから立ち上がると、おじさまに向き直った。
「久しぶりにお話できてうれしかったです」
「私もだよ。今度はゆっくり会おうね」
「はい。楽しみにしています」
挨拶を交わし、名残惜しく控え室を後にする。
つい先ほどまで混雑していたエントランスロビーも、今は関係者と思われる人がちらほらいるだけ。
「送るよ」
ホテルは目と鼻の先だけど夜も深まったし、ここは厚意に甘えよう。
「ありがとう」
ふたりでロビーを進み、コンサートホールの外に出る。すると、そよ風が舞って、ハーフアップにした髪とワンピースの裾がふわりと揺れた。
オーケストラの生演奏を堪能し、結城のおじさまとの再会を果たし、興奮がまだ冷めない私の火照った頬にウィーンの夜風は心地いい。
「直君はどこのホテルに泊まっているの?」
「俺は叔父さんと同じホテル。ここから歩いて五分くらいだな」
「へえ、そうなんだ」