初恋マリッジ~エリート外交官の旦那様と極上結婚生活~

「ああ、シュテファン大聖堂(だいせいどう)だな。展望台からの眺望は絶景だ。後で行ってみるか?」

彼がまぶしそうに目を細めて、ウィーンのシンボルである大聖堂の尖塔(せんとう)を見つめる。

今回、オーストリアを初めて訪れた私と違い、レストランや観光名所に詳しいのはなぜだろう。

「直君って、ウィーンに来たことあるの?」

不思議に思って尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「二年間、こっちで暮らしていた」

「えっ、そうなの?」

「そんなに驚くことか?」

初めて聞く話に衝撃を受けてまばたきを繰り返す私を見て、彼がハハハッと陽気な声をあげて笑う。

外交官の彼にとって、さまざまな国で暮らすのは、なにも特別なことではないようだ。

「フランスにオーストリア。あとはどこの国で暮らしたことがあるの?」

彼について、もっと知りたいという気持ちを抑えられず、左手の親指と人差し指を折り曲げ、数を数えながら尋ねる。

「四年前まではシンガポールの日本大使館で働いていた。マレーシアにも住んでいたらしいけど、小さかったからあまりよく覚えていない」

「へえ、そうなんだ」

生まれてから成城の家でずっと暮らしている私にとって、言葉も文化も習慣も日本とは異なる国を何度も移り住む生活は想像がつかない。

グローバルに活躍している彼に尊敬のまなざしを向けると、料理が運ばれて来た。
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