一途な敏腕社長はピュアな彼女を逃さない
そして、デザートが運ばれてきた頃、
ようやくお母様が口を開いた。


「かよ子さんはどんなお仕事を
されているのかしら?」


鋭い視線が私に突き刺さり、
私はお母様を見つめたまま固まる。


横で見ていた神崎さんが、すかさずフォローに入る。


「かよ子さんは画家の仕事をしてるんだ
新しく出来たホテルにも..」


「私はかよ子さんに聞いているの」


神崎さんの言葉をお母様はピシャリと妨げる。


「あ、あの...」


何か話さなきゃと思えば思うほど
喉の奥に言葉が詰まったように
出てきてくれない。

私はお母様の鋭い視線に耐えきれず、
思わず目線を下に落とした。


膝の上に置いた手の震えは止まらない。


どうしよう...言葉が出てこない...


その時、うつむいた目線の先に神崎さんの大きな手が現れて、震える私の手にそっとその手を重ねた。


私が神崎さんの方に顔を向けると
神崎さんは私を安心させるように
優しく微笑みながらコクンとうなずいた。


私も固い表情のまま、
コクンとうなずき返す。


そして、私はふぅっと大きく息を吐くと
お母様を見つめて、口を開いた。


「す、すみません...緊張してしまって...
仕事は画家をしています...
先月まで翼さんのホテルに飾る絵を描いて
いましたが...
それまでは知り合いのグループ展に自分の絵を出品して生計をたてていました...」


私が言い終えると、お母様は
「そう...分かりました」
と、全てを悟ったように一気に
残りのワインを飲み干した。

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