宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
「こんにちは!」
「いらっしゃい。一花ちゃん。今日もよろしくね!」
「はいっ!シェフ、このジャガイモの皮をむけばいいですか?」
「頼むよ。ヴィシソワーズを作るからね。」
「了解です。」
「一花ちゃん、そっち終わったらお店のテーブルにお花飾ってね。」
「ウイ、マダム。」
今日も、気慣れたジャージ姿で一花はあれこれと店の雑用を受け持っていた。
素朴な田舎町では、若い人たちは少し離れた県庁所在地へ働きに行ってしまい
島には高齢者ばかりが住んでいる。
一花のような若い働き手はとても重宝されるのだ。
今日も料理の下拵えから、レストランのテーブルに花を飾る事まで任されていた。
そのうち、セルヴーズにも駆り出されそうだ。
「一花ちゃん、今日もジャージなの?」
「マダム、これ楽なんですよ。」
「せっかく美人さんなのに…。良かったら、私の若い頃の服着てみる?」
「いいんですか?」
「その変わり、お裁縫できる?昔のだからリフォームしなくちゃ着られないわよ。」
「大丈夫。少しなら心得あります!」
「じゃあ、今度のバイト日までに用意しておくわね。」
「ありがとうございます。」