宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
待っても待っても、一花は帰って来ない。
「チョッとって…どこまで行ったんだ…。」
陸も心配になってきた。飛び出して行った一花の顔色の悪さが気にかかる。
誰かに連絡しようにも、彼女の知り合いなど皆目見当がつかない。
夕焼けも色濃くなってきた。日没が近い。
陸がもう何度目になるか、スマホを見て溜息をついていたら管理人の山形がやって来た。
「お待たせしました、社長…。」
山形はぜいぜいと息を切らしている。余程急いできたのだろう。
「一花さんから連絡があって…。」
「一花が?何て?」
「社長さんはコテージのカギを持ってないだろうから戸締りを頼まれました。」
「戸締りって…。」
「今日はお帰りにならないそうです。」
「はああ?」
思わず大きな声が出た。
「あのオンナ…どれだけ俺を振り回すんだ…。」