宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
陸は自分自身に戸惑いも感じていた。
いつもなら簡単に女を抱けるのだが、一花に対しては正直手を出していいのか迷う程だ。
細い肩に背負っている重み…。
陸にしてみれば、どうしてそこまで家族の為に犠牲になれるのかがわからなかった。
父親が家族の為に入っていた保険だったろうに、
叔父の無謀な投資に使われてしまったのは気の毒すぎた。
それを補うために大田原の失敗を利用した陸との結婚話を受けるなんて、皮肉な事だ。
『一花が産む子を水杉の後継ぎとする』
陳腐な契約だが、大田原にしてみれば自分もその子の血縁だと言って
水杉から甘い汁を吸い取ろうという気なのが見え隠れしている。
本当の意味で自分の妻にしてしまう…一花と子供を作るとなると
彼女にもっと犠牲を強いる事になりはしないか。
陸の戸惑いはそこにあった。冷酷になって割り切れないのだ。
彼女を知れば知る程、愛おしくて。
「一花…。」
自分の腕の中で無防備に眠る彼女を、ただ守りたかったのだ。