宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~
翌朝は、少し冷え込んだ。
一花はいつも通り起きて、朝食を作った。
貝のお味噌汁は、陸の好物だ。
陸が美味しそうに食べるのを見るのが…好きだった。
「お茶入れましょうか?」
「濃い目で頼み。」
「はい。」
この一週間で、随分と夫婦らしい会話になったものだ。
離れの玄関で、陸を見送る。
「じゃあ、行ってくる。」
「お気をつけて。いってらっしゃい。」
にっこり笑って、庭先まで出て彼を見送った。
小径の曲がり角で陸が一瞬、振り向いた気がする。
涙が零れないように堪えていたから、はっきりとは見えなかった。
一花はただ、彼の姿が消えた方へ向かって手を振り続けていた。