宿敵御曹司の偽り妻になりました~仮面夫婦の初夜事情~


「特に難しいケースではありませんので…ただ慰謝料は…請求できますよ?」

「もう、お金に縛られたくないんです。」

「そうですよね…。理由はどうされますか?」

「私が、他の男と出て行ったとか…適当な理由で構いません。」

「それは…あなたの評判が悪くなるのが心配です。
 ただ、水杉社長があなたを島に行かせたのは浮気を想定してだからねえ…。
 異性関係を理由にすれば、おそらく直ぐに離婚に承諾されるでしょう。」


田沼は陸との話し合いを思い出していた。
水杉陸はビジネスにかけては冷酷な男だと、人伝てに聞いて知っていた。

この結婚は、大田原家から島を取り戻すための割り切った物になる。

あの日、淡々と告げる陸は、恐ろしいほど冷静だった。
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