キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「伯父さんは、俺が茉緒と付き合うことに反対ですか?」
敵になるか味方になるか。
口を噤んで俺を見つめる伯父の返答を待ったのはほんの数秒のはずだが、とてつもなく長い時間に感じた。
「私は否定も肯定もしないよ。智成がどうするか、静観するとしよう」
息を張り詰め待っていた答えがそれでかくっと脱力した。
まさかどちらでもないとは思わなかった。
強い味方ができるかもと思っていたが仕方がない。反対されないだけでも良しとしよう。
「ただ、これだけは言っておこう。たとえ有川くんと結婚しなくてもわが社に悪影響はない。それくらいのことで揺るぐような組織ではないからな」
「それを聞いて、安心しました」
有川の件は無理に推し進めたいものではないと聞いて安心した。
これなら、両親に茉緒のことを話しても無闇に反対されることはないだろう。
やはり伯父に話をしておいてよかった。
後は有川本人に俺には結婚の意思はないと伝えればいいだけだ。
簡単だと思っていたのだが、少し問題があった。
有川は親が決めた見合い相手だ。
だが、今回の会食は会食であって見合いではない。
有川社長も娘も見合いや結婚の話をしていない。
そこにいきなり俺が有川とは結婚するつもりはないと言ってもおかしな話になる。
これは、放っといておけば流れる話なのでは? と思ったがそうはいかないみたいだ。

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