キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
三週間前のこと、いつものようにお店でどっしり座って指示を出す寛子さんがイタタとお腹を摩り始めた。
「寛子さん? お腹痛いんですか?」
「うん、なんか、とうとう来たかも陣痛」
「え? まさか」
私はアワアワしてマスターも仕事どころじゃなくなっていた。
そんな中、一番冷静だったのは寛子さんで、お腹の痛みが治まっている間にテキバキと慌てる私とマスターに指示を出す。
出産のときにはマスターも立ち会うことになっていたから、お店は閉めることになり店内にいたお客様に断りの挨拶をするとみんな嫌な顔せず、寛子さんに出産頑張ってねと励ましの言葉を残し帰って行った。
閉店作業をして陣痛が十分間隔になったっ頃病院に連絡して向かうことになった。
私はお店の前で見送るはずだったけど寛子さんに一緒に付いてきてとお願いされて一緒に病院へ。
私はマタニティー雑誌で覚えたことを思い出し、陣痛が強くなってきた寛子さんの腰をマスターと交代しながら摩ってその時を待つ。
「う~いたた、茉緒ちゃん上の方もっと強く押して」
「こうですか? 今が一番つらいですよね、頑張れ、寛子さん、赤ちゃん」
「はあ、ありがとう茉緒ちゃん、痛みが和らぐわ」
腰をぐいぐい押してるのにそれが気持ちいいのか寛子さんは少しだけ顔を綻ばせる。
マスターは水を飲ませてあげたり甲斐甲斐しくお世話をしながら気持ちを落ち着けていた。
そしていよいよマスターと分娩室へ入った寛子さんに頑張れと祈りながらドアの前で待つこと一時間。

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