キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
空気が和んだところで、思い出したように話を変えた。
プロジェクトの関係でまた陸翔がニューヨークに飛ぶ。
俺がほかの案件で動けない代わりに陸翔に行ってもらうのだが、俺を手伝うのを渋ってた割にはこの出張は文句も言わずに応じてくれた。
まあ、茉緒とのことを許そうっていう気になっていたからだろうがそれだけじゃないと踏んでいる。
ニューヨークの件は頼んだぞと言うと、任せとけと自信に満ち溢れた表情で頷く陸翔を頼もしく思うが、視線を斜め上に上げ一瞬にやけた顔をしたのを見逃さなかった。
今回は益木さんを伴っての出張だ。
そう、陸翔が大事に育てている後輩。妹(?)のようにかわいがっている、あの、益木彩也子さんだ。
『益木さんも一緒なんだよな? ふたりっきりで出張か、いいな。俺も茉緒と出張いけたら楽しいだろうに』
『は!? な、なに言ってんだよ! お、俺たちは仕事で行くんだ! 遊びじゃないぞ!』
いつも飄々としている奴が珍しく血相を変え面白いくらいに狼狽えているから思わず吹き出してしまった。
からかわれたと気づいた陸翔は不貞腐れた顔をする。
益木さんが好きなんだろ? と聞けば素直に頷いた。陸翔にしては珍しく手を出してないみたいだなと思って聞いてみたら、むすっとした顔で俺を睨んだ陸翔は観念したように息を吐く。
『……とっくに振られてる。今は仕事に集中したいんだと』
『へえ~告白したのか。陸翔を振る子がいるんだな』
珍しいものでも見るように陸翔を見る。
陸翔はなかなかのイケメンで人当たりがよく恋人になりたいと狙ってる子も多い。陸翔が告白して断られたなんて今まで聞いたことがなかった。
仕事に集中したいだなんて女子にしたら珍しい。(てい)のいい断り文句みたいだな。
益木さんは彼氏がいるとか好きな人がいるってわけでもなさそうだ、それならそうと言うはずだし。
陸翔に遊ばれると思っているのだろうか? 見た目と調子のよさで軟派に見られやすいが根は真面目で好きな子には意外と一途なんだがな。と、親友らしく陸翔を擁護したくなる。

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