キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です

恋人になっちゃったんです

智成は眉根を寄せてじっと私を見つめた後、こつんと額を合わせた。
「じゃあ、もうそんな顔するな、茉緒」
「へへっ、そんなに変な顔してる?」
情けないところばかり見られてもう笑うしかない。
脱力し肩を落とすと、智成が顔を上げた。
「茉緒、今日はまだ終わっていない」
「え?」
時計の方を見る智成につられて私も見るといつの間にか午前零時まであと十分を切っていた。
智成は真剣な顔で私を覗き込む。
「今俺は茉緒の恋人だ。恋人にそんな辛そうな顔はさせたくない。茉緒を幸せにするにはどうしたらいい? どうやったら過去を忘れさせてやれる?」
「ふっ、ほんとに智成って優しいよね。私は十分に幸せだったよ?」
「俺は茉緒を最後の一分一秒まで笑顔したい、幸せにしてやりたいんだ」
どこまでも優しい智成に私は胸が熱くなった。
今日だけでなく、これからずっと私を愛してって言えたらどんなにいいだろう。
でも、過ぎたことを望んだらダメだよね?
きっと零時を過ぎたら私たちは友達の妹、兄の友達の関係に戻ってしまう。
へたなこと言って「それは、ごめん。できない」なんて断られて、自分でさらに傷口を広げてしまったらもう立ち直れない。
でも、ちょっとだけ、わがまま言わせて。
「じゃあ、最後の一分一秒まで私を抱き締めて?」
つい上目遣いで様子を伺うと、智成は目を丸くした後、ふっと笑った。
「ああ、いくらでも抱き締めてやる」

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