キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「なんだ、不満そうだな。俺に早く出てってほしいんだろ?」
冷たい声に泣きそうになった。
確かに出てってほしいと言ったけど、それは本心じゃない。
私だってほんとは智成とくっついていたいのだ。
なのに、智成は私の上げ足を取り、反論あるのかと言わんばかりに私を跨いだまま腕を組み上から見下ろす。
「そんな、酷い……」
漂う冷気に震える声で小さく言うと潤む目を智成に向ける。
ほんと酷いこの男。
「智成のばかっ、意地悪っ」
「ああ?」
ムカムカっと来て不満をぶつけるように言い放つと、智成はドスの効かせた声で私を睨みつけた。
私も負けじと睨み返し、勢いで嫌い! って口走りそうになったけど……。
「きっ……嫌いになんてなれない~ばかぁ~」
涙声で情けなく呟いていた。
すぐ不機嫌になるし意地悪だし、自分勝手な男だけど、やっぱり好きなものは好きだ。
いつもはとびきり甘くて優しくて私を骨の髄まで蕩けさせる。まるで麻薬のようにもう抜け出せないほど智成にハマってる。
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