ハニー、俺の隣に戻っておいで
要するに、ミシェルはジェームズ本人には興味がないのだ。 それどころか、ゲームの中で彼が演じるキャラクターを追いかけているに過ぎないわけだ。

ジェームズは「俺はかっこよくて魅力的だからいつも女の子たちが集まってくるけど、可愛らしい子は好みじゃないんだよね」と気取って言うと、髪を撫で付けながら勿体ぶって顔を上げた。

そして左手をズボンのポケットに入れ、その場に突っ立ってプレイボーイのように振る舞ったが、

もちろん、実際にプレイボーイなのだ。

「誤解しないでちょうだい。 あの子はあなたに恋しているわけじゃないわ」ニーナは反論し、友人を守ろうとした。

「好きじゃないなら、なんで毎日追いかけ回したりしたんだ?」
ジェームズは自分の魅力に自信満々だったので、それはただニーナがミシェルに残されているわずかばかりの尊厳を守ろうとしているのだと思ってる。

そのとき、ミシェルが言っていたゲームのことをようやく思い出した。 彼女は二人のゲームの中での関係を断とうとして、別のプレーヤーと結婚してミッションをクリアしようとしている。ミシェルはゲームで賞を取りたくて仕方なかったのだ。

「だいぶ前からゲームにログインしてないでしょ? ミシェルはゲームの中の恋愛関係を断ちたいだけよ」

「そう。もう二ヶ月はログインしていない。 一、二回やると飽きちゃうんだよね」
ジェームズはさりげなく言い、退屈そうに手を振った。

ニーナはようやくミシェルがホテルまで彼を捕まえに行った本当の理由が理解できた。 ゲーム中の仮想恋愛を終わらせようとしただけだったのだ。キャンパスで彼を追いかけたのも、同じ理由からだった。

ジェームズのように一、二回しかプレイしない人はゲームが下手なのだが、 ミシェルはおそらくうまく丸め込まれて、ゲームの中でカップルになってしまったに違いない。
けれど今や、ミシェルにちゃんと説明して自由にしてやるのが彼の義務というものだろう。
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