ハニー、俺の隣に戻っておいで
後になってニーナはミシェルと話したときこの推測について聞いてみたところ、 案の定、彼女は正しかった。

ジェームズとしばらく歩くと、ニーナは彼のとめどないお喋りにすっかり閉口して、 適当な言い訳をこしらえて立ち去ろうとしていた。

ジェームズにはニーナをこれ以上困らせる理由はないはずなのだ。けれども去り際にちゃっかり彼女のラインアカウントを手に入れるまで、彼は長々とニーナを言いくるめた。
そして、ラインを通して叔父の消息を伝える方が好都合だと言って正当化したが、

その間ずっと、心の中で壮大な計画を練り上げていた。 叔父がニーナに一度ならず二度までも殴られて我慢しているとは、どう考えたって胡散臭い。

叔父のアシスタントも、もしニーナを手なずけることができたらジョンの歓心を買うことができるだろうと仄めかしていた。

ジェームズはあれこれ熟考しながら楽しそうに口笛を吹き、タイムグループのCEOオフィスに入っていく。

ヘンリーはジェームズを目にすると彼の訪問に驚かずにはいられなかった。 「ジェームズ、授業はどうしたんですか?何しに来たんですか、一体?」

「今日の午後は授業がないのさ」
ジェームズは恥知らずに嘘をつくことにかけては天才だった。さっと頭をオフィスに突っ込み、「叔父はオフィスにおりませんか?」と尋ねる。

「シー社長は グレン・チャン氏と取引の最中でして」

「イザベラさんのお父様ですよね?」
先ほどのイザベラの恥知らずな行動を思うと、ジェームズにはどうしても彼女自身のみならず家族までもが憎たらしく思えるのだった。

イザベラのような計算高い娘を生み出したからには、両親も腐りきっているに違いないからだ。

グレンは大爆笑しながら横柄な態度でうなづき、執拗にお辞儀をした。
「そうです、シーさん。あなたのおっしゃる通りにいたしますよ。あなたと提携するチャンスをいただけて本当に幸運です」
< 103 / 255 >

この作品をシェア

pagetop