ハニー、俺の隣に戻っておいで

ジョンの視界から出るとすぐにジェームズは普段の呑気な態度に戻り、 ヘンリーの肩に片手を置いて、親しげにアドバイスした。
「ヘンリー、ニーナとイザベラの関係なら、キャンパス・フォーラムの投稿を調べるところから始めればいいんじゃない？二人の投稿はここ数日、議論の的だ。胡散臭いことがあるに決まってる」

「シーさん、 他人の噂するのはあまりいい考えとは思えませんが」
ヘンリーはジェームズのアドバイスは役に立たないように感じていた。

案の定、ジェームズはどこへ行っても、呑気でやりたい放題だった。彼が子羊のように従順に振る舞うのはジョンを前にしたときだけなのだ。

「噂じゃないぜ。 面白いことが隠されているんだ、ほら、チェックしろよ」ジェームズは大学にいる間の暇つぶしとして、キャンパス・フォーラムにログインするのが好きだった。
そこで読める愉快なゴシップがなかったら、かれは退屈のあまりすでに死んでいたことだろう。

一方、ヘンリーは自分のコンピューターに張り付いていた。 インターネットに関することなら朝飯前なのだ。
彼は相変わらずテキパキと学校のシステムをハッキングすると、キャンパス・フォーラムの投稿を復元し、匿名の投稿者のIP情報を確認した。ものの十分もしないうちに、事件の全貌がきっちりと明るみに出されてしまった。

するとヘンリーは重要な情報を印刷してジョンに手渡した。

「シー社長、 ニーナ・ルーとイザベラ・チャンに関する投稿がこれです。二人ともキャンパス・フォーラムでお互いについて投稿したようです。それから、こちらはイザベラがフェロモン香水を買った際の支払い記録です。インターネットで集められた情報に基づくと、あなたと偶然遭遇したときニーナはイザベラに香水を吹きかけられていたのではないでしょうか？翌日イザベラは、乱れた服を着たニーナがあなたの部屋を出て行くところを写真に撮った。そして、彼女の評判を傷つけるためにキャンパス・フォーラムに投稿したと言うわけです。ニーナはそれを突き止め、仕返しのためにイザベラを誘い出して不良たちに暴行させたのでしょう。さらに彼女を辱めるために、キャンパス・フォーラムに投稿をした」