ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナは振り返って少し顔を擡げただけだったが、 ジョンは一メートル九十センチもあるので、遠くからでも簡単に見えるのだ。

ジョンはふさふさの黒髪と威勢のいい眉毛の下で明るく輝く瞳を持っており、薄い唇はわずかにすぼめられていた。

ジョンは頭を横に傾けてニーナを見つめたが、愛情がはっきり見て取れる。

彼はイタリアから取り寄せたオーダーメイドのスーツを着ており、 スーツの左ポケットにはカルティエのペンを差し、左手の青い腕時計は彼をさらに活力的かつ高貴で気品に溢れているように見せていた。

彼は、誰にも真似できない貴族的な洗練された物腰とともに生まれたのだ。

ニーナはすでに何度か会ったことがあったが、その時までじっくり彼を値踏みしたことはなかった。 彼女はジョンを上から下まで眺め、スーツを着た彼がかなりハンサムに見えることに気が付いた。

そしてスーツで覆われた下半身を見下ろす。 八つに分かれたそそるような腹筋がその下に隠されているのを、彼女はよく覚えていた。

そして不意に、とんでもない結論がニーナの頭に浮かんだ。 ジョンは裸の方がかっこいい!

彼女にとって、彼は服を着ていない方が魅力的だったのだ。

ジョンは彼女の大胆な視線に気づいていたが、黙って好きなだけ眺めさせておいた。

彼はあらゆる女性の注目を常に集めることができるとわかっていたが、いま目の前にいるこの女の子も例外ではない。 彼女が心奪われるのも時間の問題だ。

「先輩? おまえは経営学専攻、彼女は心理学専攻なのに、どこで知り合ったんだ?」
ジョンはジェームズにさりげない調子で尋ね、急いでニーナの方に歩いて行く。

彼が近づいてきたときニーナはようやく我に返り、 一歩後ずさりすると頭を下げて挨拶した。
「おじさん」
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