ハニー、俺の隣に戻っておいで
ニーナはジェームズの先輩として、自分もジョンのことをおじさんと呼ぶべきだと考えたのだ。

(おじさん?)

ジョンは足を止め、見るからに戸惑いながらニーナを見つめた。 彼は半月の間彼女の音楽的な声を聞いていなかった。

けれども、彼女はなんでまたジェームズなんか追いかけ回し、おまけにおじさんなんて呼び方をするのだろう? 彼の甥の妻になりたいのだろうか?

彼の愛を得ることができそうにないというそれだけのことで、彼よりもジェームズを選んだと言うことだろうか?

ニーナは燃えるような瞳で見つめられ、少しばかり慌てた。 そして、気恥ずかしさを隠すために自分から彼に近づき、優しく微笑んだ。「おじさん、また会いましたね」

そしてゆっくりと「おじさん、これで三度目ですよ」と思い出させるのを忘れなかった。

約束どおりビデオを削除すべきだと仄めかしているのだ。

ニーナは二人の関係を終わらせようと焦っているようだったが、ジョンはその望みを打ち砕いてやろうと企んだ。

そこで、彼は「で?」と 尋ねる。

「何言っているのよ?」
ニーナの表情が一瞬にして曇る。
(約束を破るつもりなの?)

彼女の甘い笑顔は一瞬で消えて強気なニヤニヤに変わり、 爪の鋭い猫のように警告する。
「すぐにビデオを削除して約束を守りなさい。さもないと笑い者になるわよ」

ジョンが面子を保ち、評判を損なわないようにすることにどれほど敏感であるか知って以来、ニーナは彼の弱点を掴んでいたのだ。 そして今、その弱点をいかにうまく利用できるかが鍵だというわけだ。
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