ハニー、俺の隣に戻っておいで
反対側ではジェームズが黙って親指を立て、ニーナに賛意を表している。 彼女は将来、ジェームズの叔母になるかもしれないのだから、この態度も不思議ではない。
ニーナがジョンの弱点をうまく突く方法を知っているとなると、これはいい勝負だった。

一方、ジョンはますます驚いて肩を落とす。 ニーナは今や大胆にも脅しをかけて、彼の面子を傷つけようと言うのだ。

ジョンは、自分のしでかしたことのせいでニーナに嫌われるのではないかと不安になり、彼女に親切にして良いところを見せようと思った。

けれども、ニーナがどうして自分と折り合いをつけるよりも喧嘩することを選んだのか、ジョンは理解できずにいた。

どうして礼儀正しくお願いすることができないのだろう?

「お望みならビデオを削除してやってもいいぜ」
ジョンは笑顔で携帯電話を取り出し、ニーナがイザベラを打ち負かすために人を雇っているところを撮ったビデオを削除した。

けれども、二人で一夜を過ごした時のビデオは実は持っていなかったので、それが例の夜のビデオだと嘘をついた。

あの夜、ジョンはニーナを愛するのに忙しかったのでビデオなんか撮っている暇はなかったのだ。

その上、そんな下品で倒錯的な趣味があるわけでもない。

ジョンは、ニーナがあの夜のビデオかどうかしっかり確認する前に携帯電話の削除ボタンを押し、ゴミ箱まで空にして跡形もなく消してしまった。

「あんたの携帯見せて」
ニーナはこの男をあまり信用しておらず、自分の目で確かめるまで安心できないのだ。

彼女が手を差し出すと、 ジョンは、そのほっそりした指が魅力的で少しばかり刺激的だと気づいた。

「俺の携帯を見ていいのは妻だけだ。 おまえは俺の妻なのかい?」
ジョンは眉を吊り上げてからかう。唇に浮かぶいたずらっぽい笑顔は、彼が茶化しているということを示している。

実は、ニーナこそ彼の妻なのに!

けれども、二人ともその事実に気づかず闇の中に取り残されていた。
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