ハニー、俺の隣に戻っておいで
その上、ニーナはこれまで誰かに屈服するなどという愚かな真似は一度もしたことがないのだ。

しかも、この男はまったく信用ならないときている。 彼女を騙して面倒に巻き込むような男だ。

ニーナは、イザベラに濡れ衣を着せられ不当な書き込みで虐められたとき、同じ方法で仕返しすれば彼女を同じ目に遭わせてやれると思っていた。 そうなれば、イザベラとの関係など完全に断って自分の人生を謳歌することができたはずだった。

ところが、ジョンが余計なことをしたせいでイザベラはニーナを毛嫌いし始め、 チャン家は誘拐を計画して人を雇うまでに至ってしまったのだ。しかも、こういうことは今後何度も起こり得るわけである。

だから、ニーナはジョンのやらかしたことを簡単に許して忘れ去ることなどできなかった。

「生理中なの。 女性には毎月あるのよ。生理中に妊娠することはないから、心配しなくていいわ。あんたの子供なんか身ごもってないから大丈夫。それに、いつか本当に子供が欲しいと思ったとしても、絶対にあんたの子供じゃないから」ニーナは鼻を鳴らしたが、自分のことではないような気がして内心どうでもよかった。

ジョンの冷酷な顔に怒りが沸き起こっているのを見てもニーナは怖じ気ずくことなく、堂々と続ける。「チャン家にビデオを渡しことは許してあげるわ。 運よく、私の身には何も起こらなかったしね。取り越し苦労だったわ。

じゃあ、もう行くから。 車を停めてちょうだい!早く!」ニーナは手を振り上げると不安げに車の脇を叩いた。

一刻も早くジョンの手から逃げ出そうとウズウズしているのだ。
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