ハニー、俺の隣に戻っておいで
それはあっという間の出来事だったので、誰も反応することすらできなかった。 一方、ジェームズは自分の任務をうまく果たしたので、自分に向かって誇らしげな拍手をしていた。

ジョンおじさん、今度はあなたの番ですよ。 せっかくチャンスを作ってあげたんだから、進展させてくださいね。

これ以上はお手伝いできませんよ。 彼はニヤニヤしながら考えていた。

一方ニーナはと言うと、咄嗟にドアを引っ掴んでさっさと出て行こうとしたが、どんなに頑張ってもドアノブが回らないことに気づいた。 うんざりすることに、誰かが外からドアに鍵をかけてしまったようだ。

振り返るや否や、便器の前に突っ立っている男が訳もなく暗い眼差しで彼女を見つめているのが目に入る。

それは彼女が今一番会いたくない人物、ジョンに他ならなかった。

しかも、困ったことに彼はおしっこをしているのだ。

目が合うとニーナの顔は屈辱で真っ赤に染まり、いきなり「いやー!」と叫んだ。 そして目を覆うと同時に慌てて振り返り、唇を噛み締め、 目を閉じたまま「ごめんなさい」と不器用に謝った。

ニーナの当惑に比べるとジョンはあまり動揺しなかったらしく、 慌てる様子もなく、さっとズボンのチャックを閉めると「大丈夫だよ」と言って平然と歩き始めた。

ニーナは、ジョンがおしっこをしているところを見られたのに気にも掛けず、こんなに堂々と振る舞うのはおかしいと思った。 激怒して皮肉の一つでも言いそうなものだが?
< 168 / 255 >

この作品をシェア

pagetop