ハニー、俺の隣に戻っておいで
「何を驚いているんだ？ ベルーガキャビアに決まってるだろ！」 ジェームズは独善的な表情でそう言った。

ミシェルはそれをニーナの前に置き、「ニニ、食べてみな。 きっと美味しいから。 あと、これも。 シーフード好きなんでしょ？ これが最高級のシーフードよ」

ニーナは、あれこれと珍味を寄越してくるミシェルに微笑みかける。 実を言うと、彼女は以前もっと美味しいシーフードを食べたことがあったのだが、 こんなにたくさん目の前に並んでいるのを見たのは今回が初めてだった。

彼女がまだ家にいた頃、両親は忙し過ぎて家で食事ができなかったので、 ニーナは兄とたった二人でご飯を食べたものだった。

ミシェルはテーブルの料理を全部食べ尽くすつもりなのか、料理を山ほどかき集めては自分のお皿に乗せていった。 一方ジェームズは、ミシェルがニーナに渡した料理について蘊蓄を傾けている。

その様子はまるで円満な家族のようで、 ジェームズが弟、ミシェルは妹のように見えたが、 そのイメージを完全なものにするには兄が必要だ。

そこで、ニーナはジョンに目を向ける。

兄にしては年をとり過ぎね。 かといって、叔父さんにしては若すぎる。 男だから母親は無理に決まっているが、 でも、父親も絶対ありえない。 私の父親ならもっとかっこよくなくちゃね。

ああ、忘れよう。 ジョンは仲間はずれってことで。

ニーナはその考えを振り払い、目の前で山のようになっている料理に集中することにした。

彼女はテーブルに並んでいる素晴らしい料理に夢中になって然るべきだったが、どういうわけか脇をチラチラ窺わずにはいられなかった。

横目でジョンに目をやると、 美しい彫りのある彼の男らしい顔は無表情だがハンサムで、 少しばかり長いまつげは目の下に影を落としている。

彼はどこへ行っても疑いなく印象的な男だった。
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