ハニー、俺の隣に戻っておいで
これを聞くと、アダムズは激怒した。 「ニーナは私の娘ではありませんが、娘の友人です。 ウィルソンさん、 ジュ氏の評判をご存知ないんですか? どれだけの女性が犠牲になったのか。 この子には手出しさせませんからね」

投資家というのがジュ氏だとわかっていたら、 彼はニーナをこの場に連れてくることに決して同意しなかったはずだ。

ニーナにだって両親がいるのだ。 娘がこんな苦痛を味わっていると知ったら、悲嘆に暮れることだろう。

アダムズは帰ると言い張ったがウィルソンはそれを認めず、 一方ジュ氏は 出席者への挨拶をほとんど終えたところだった。

偶然、ジュ氏の 目がニーナに向けられたがアダムズが視界を遮っていたので、彼はニーナの体の半分しか見ることができなかった。

しかし、写真で見た美人がこの場に居ると思うと欲望が湧き上がり、意味ありげな笑顔を見せずにはいられなかった。

この場にいる限りニーナに彼の手を逃れる術はないのだから、何も急ぐことはない。

ジュ氏は いやらしい視線を逸らすと、じっと隣に立っていたジョンを明るい笑顔で紹介する。

「隣にいらっしゃるこの方をご紹介しましょう。 タイムグループのCEO、 シーさんです」

それを聞くと誰もが驚いた。 ジョンは帰国したばかりで滅多に姿を現さなかったので、 彼を目にした者はほとんどいなかったとは言え、知名度は抜群なのだ。

初めて彼に会った人たちは冷酷で容赦ないシー氏が たった三十の若者だと知って驚き、すでに彼を知っている人々は忙しいシー氏が そんなパーティーに現れたことに驚いた。
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